あらゆる野球漫画へのアンチテーゼ
あらゆる野球漫画へのアンチテーゼとして
この作品はつくられています。
1つは、主人公のピッチャーが豪速球を投げないこと。
1つは、努力と根性が必ずしも勝利に結びつくとは限らないこと。
そして最も重要なことは、
主人公が悪党であること。
(以上 2巻 中表紙 作者コメントより)
ハイハイどうもー。
W杯のおかげでレビュー活動をサボッておりましたが、最近ようやく落ち着いてきたので(何が?)久しぶりにお気に入りの漫画をレビューしてみようと思います。
今回は一風変わったこんな野球漫画。
ONE OUTS/甲斐谷忍 ★★★★☆
現在18巻まで発売中
あらすじ:
“優勝に必要な何かが足りない”その“何か”を捜して、沖縄で自主トレに励む“不運の天才打者”児島弘道。そこで彼は一人の男と出会う。120km/hそこそこの直球だけで、賭野球“ワンナウト”で無敗を誇る男。彼は名乗る。渡久地東亜と…。
(以上 出版社/著者からの内容紹介を引用)
(以下ネタバレ含む)
この作品はつくられています。
1つは、主人公のピッチャーが豪速球を投げないこと。
1つは、努力と根性が必ずしも勝利に結びつくとは限らないこと。
そして最も重要なことは、
主人公が悪党であること。
(以上 2巻 中表紙 作者コメントより)
ハイハイどうもー。
W杯のおかげでレビュー活動をサボッておりましたが、最近ようやく落ち着いてきたので(何が?)久しぶりにお気に入りの漫画をレビューしてみようと思います。
今回は一風変わったこんな野球漫画。
ONE OUTS/甲斐谷忍 ★★★★☆
![]() | ONE OUTS 1 (1) 甲斐谷 忍 (1999/06) 集英社 この商品の詳細を見る |
現在18巻まで発売中
あらすじ:
“優勝に必要な何かが足りない”その“何か”を捜して、沖縄で自主トレに励む“不運の天才打者”児島弘道。そこで彼は一人の男と出会う。120km/hそこそこの直球だけで、賭野球“ワンナウト”で無敗を誇る男。彼は名乗る。渡久地東亜と…。
(以上 出版社/著者からの内容紹介を引用)
(以下ネタバレ含む)
レビュー:
この漫画を一言で述べるなら「野球という名のギャンブル」。
従来の野球漫画は『特訓による成長』、『試合での力と力のぶつかり合い』と言った人間の「体」の部分で勝負していくパターンが多かったのに対して、ONE OUTSの中の勝負の重点はひたすら「頭」。
球団オーナーとの年俸を巡る億単位で動くマネーゲーム。
イカサマ、反則何でもアリの試合の中で如何に相手の裏をかくか?貶めるか?という駆け引き、騙し合い。
つまり勝負を左右するのはあくまでプレーヤーの頭脳に絞ってるのがこの作品の味噌なのです。
たまに半ば無理やりな理論も登場しますが、ギャンブルにも見て取れる頭脳戦が、体力勝負がウリのプロ野球という舞台で繰り広げられることが、この漫画がありきたりな野球漫画とは違った極めて「異質な面白さ」を持つことに繋がっています。
①異質な主人公
そしてその中でも「最も異質」な存在であるのが他でもない、本作の主人公渡久地(とくち)。
彼はひょんなことからプロ野球界に足を踏み入れることになりますが、とにかくこの主人公、入団からいきなりブッ飛んでます。
テストも挟まずプロ契約することになった渡久地は、シーズン開始前に球団オーナーと直接年俸交渉に臨むのですが、渡久地自身から提示したその内容とは・・


ワンナウトにつき +500万
1失点につき -5000万
の完全出来高制年俸。名付けて「ワンナウト契約」。
かつてかわぐちかいじの野球漫画「バッテリー」の中で海部投手が「シーズンを通し自責点ゼロ」という仰天の公約を掲げましたが、この渡久地のワンナウト契約も充分非現実的な契約です。
その理由はすぐ作中でも説明されます。
・防御率2,7(この作品内で前年のほぼ最優秀防御率)という投手がいた場合、この契約で1試合通して9イニング27アウトを取るまで投げたと仮定すると、
+500×27アウト =+13500万
-5000万×2,7失点=-13500万
合計 0万
そう、仮に最優秀の防御率でシーズン投げ通せたとしても収支はゼロ。つまりタダ働きに等しいのです。
そしてオーナー側もテスト入団でもない、こんな素性も知れない投手にはビタ一文とて払いたくはありません。よってこんな馬鹿げた契約でもおいしいと睨んで渡久地の提示した条件を飲むことになるのです。
しかしこの異端の条件を飲ませることに成功した渡久地、勿論やることも異端だったりするんですよね。
自身初先発となるオープン戦。
ちなみにこの渡久地、ストレートの球速は120km/hそこそこ、おまけに球種は直球のみという一見平凡窮まりない投手です。
にも関わらずいきなり完全試合。
更に仮にも一応「野球漫画の主人公」という役付けだったりするのですが・・

疑惑をかけた選手に土下座を強要させたり

自分をハメようとした敵を逆に金で買収したり
およそ主人公とは言えない容赦ない悪役っぷりをまざまざと見せ付けます。
かつてはこんな外道野球も存在しましたが


渡久地も主人公として「まさに外道!」と言える存在かもしれません(笑
②異質な試合
さて、主人公も異質ならば、彼が活躍する試合という場もやはりなかなか異質な内容です。
それが顕著に表れてる試合を一つ例に取り上げてみたいと思います。
首位マリナーズとの三連戦。

オーナーの命令により怒涛の三連戦三連投することになってしまった渡久地。
当然コンディションは万全とは程遠い状態です。しかもこの試合のワンナウツ契約のレートは20倍。失点即デッドラインの過酷な状況。
しかし流石の渡久地も三戦連続先発では王者マリナーズ打線を満足に抑えることはできません。
結果

打たれる

打たれる

見るも無残な炎上。三回を終えてまさかの14失点。

この時点でこの後全ての打者を抑え切ったとしてもその負債実に105億。
20倍レートということでもう負け額の桁もおかしいことなってます。
なにもない!見よこのブザマに炎上したヒーローの姿を!
だが!だからといって渡久地がこの物語のヒーローの資格を失いはしない!
なぜなら・・

渡久地は知っていた。
今日これからこの球場が大雨に見舞われることを・・!

事前に天気予報を入念にチェックしこの情報を最初から掴んでいた渡久地。見て下さいこのしてやったり顔。
ポツポツと降り始めた雨に一転慌て始めるマリナーズベンチ。
そして渡久地との年俸マネーゲームで勝利を確信していたオーナーの顔色も変わります。
なぜなら・・

そう、いくら圧倒的大差の勝ちゲームでも試合が成立する5回より早く降雨コールドが宣告されれば、この試合は試合としては不成立即ちノーゲーム扱いとなってしまうのです。そして105億という桁外れの渡久地の負債もチャラ。
つまり渡久地の14失点の炎上も全て試合時間を長引かせ、5回になる前に大雨を待つ為の策略だったのです。
大雨が近付いていることが分かったことで、ここから試合は
マリナーズ側→何とか勝ち試合として成立する為にも試合を5回まで早く終わらせる。
渡久地側→とにかく長く試合を引き伸ばす。
という様相に変わってきます。
まずはマリナーズ

バッターボックスから足をはみ出して打つ。
これは打ったとしてもアウト扱い。
これによりアウトカウントを一つ失い試合を進められた渡久地。
しかし不敵にこう言い放ちます。

「これは頭脳のバトル。より高度な反則をした者が勝ちだ。」
高度な反則が勝負を分ける。もはや野球でも何でもありません。いや一応野球なんですが
しかし逆にこういう反則含めたギリギリの勝負事こそかつて賭博野球で無敗を誇った渡久地の最も得意とする領域なのです。
かくして野球という世界の中で頭脳戦という名の反則合戦が幕を開けます。

わざとボーク。
↓

反対のバッターボックスに移る。※反則によりアウト。
↓

プレートを踏まずにそのまま投球。※反則投球によりボール扱い。
↓

一塁へ進塁する際に三塁に進塁。※反則によりアウト。
渡久地の反則で更に2点を追加、16-0となるも、何とか3アウトをもぎ取り4回の攻撃を無理やり終わらせたマリナーズ。
かつてこんな↓豪快な反則もありましたが・・(シツコイ

流石にここまでひどくはありませんが、渡久地とマリナーズの四回の反則攻防もまた別ベクトルでの見応えがあって面白いです。
しかし試合が成立する5回まで残すところあと1回。
これから渡久地側が時間を引き延ばしノーゲームを狙う為にはどうするか?良い案が思い浮かばず思わず渡久地の意見を聞くナイン。

ナイン「なぁ渡久地 どうすりゃいーんだ俺たち」
渡久地「ふふ・・最高の方法を教えてやるよ」
渡久地の口から放たれる曰く「最高の方法」とは・・・

渡久地「この16点をひっくり返す」
ナニーーーーーッ!?( ゚ Д゚)
僅差の点差ならまだしも16点差です。一体どのような奇策で試合をひっくり返すというのでしょうか。
みなまで言うのもアレなので、今回はここまで触れるだけで終わりにしておきますが、もしこの先が気になる方がいらっしゃればお近くの本屋さんで立ち読みでも構わないので是非一度読んでみて下さい。
アッと驚くようなラストが待ってたりもしますよ(何
この漫画を一言で述べるなら「野球という名のギャンブル」。
従来の野球漫画は『特訓による成長』、『試合での力と力のぶつかり合い』と言った人間の「体」の部分で勝負していくパターンが多かったのに対して、ONE OUTSの中の勝負の重点はひたすら「頭」。
球団オーナーとの年俸を巡る億単位で動くマネーゲーム。
イカサマ、反則何でもアリの試合の中で如何に相手の裏をかくか?貶めるか?という駆け引き、騙し合い。
つまり勝負を左右するのはあくまでプレーヤーの頭脳に絞ってるのがこの作品の味噌なのです。
たまに半ば無理やりな理論も登場しますが、ギャンブルにも見て取れる頭脳戦が、体力勝負がウリのプロ野球という舞台で繰り広げられることが、この漫画がありきたりな野球漫画とは違った極めて「異質な面白さ」を持つことに繋がっています。
①異質な主人公
そしてその中でも「最も異質」な存在であるのが他でもない、本作の主人公渡久地(とくち)。
彼はひょんなことからプロ野球界に足を踏み入れることになりますが、とにかくこの主人公、入団からいきなりブッ飛んでます。
テストも挟まずプロ契約することになった渡久地は、シーズン開始前に球団オーナーと直接年俸交渉に臨むのですが、渡久地自身から提示したその内容とは・・


ワンナウトにつき +500万
1失点につき -5000万
の完全出来高制年俸。名付けて「ワンナウト契約」。
かつてかわぐちかいじの野球漫画「バッテリー」の中で海部投手が「シーズンを通し自責点ゼロ」という仰天の公約を掲げましたが、この渡久地のワンナウト契約も充分非現実的な契約です。
その理由はすぐ作中でも説明されます。
・防御率2,7(この作品内で前年のほぼ最優秀防御率)という投手がいた場合、この契約で1試合通して9イニング27アウトを取るまで投げたと仮定すると、
+500×27アウト =+13500万
-5000万×2,7失点=-13500万
合計 0万
そう、仮に最優秀の防御率でシーズン投げ通せたとしても収支はゼロ。つまりタダ働きに等しいのです。
そしてオーナー側もテスト入団でもない、こんな素性も知れない投手にはビタ一文とて払いたくはありません。よってこんな馬鹿げた契約でもおいしいと睨んで渡久地の提示した条件を飲むことになるのです。
しかしこの異端の条件を飲ませることに成功した渡久地、勿論やることも異端だったりするんですよね。
自身初先発となるオープン戦。
ちなみにこの渡久地、ストレートの球速は120km/hそこそこ、おまけに球種は直球のみという一見平凡窮まりない投手です。
にも関わらずいきなり完全試合。
更に仮にも一応「野球漫画の主人公」という役付けだったりするのですが・・

疑惑をかけた選手に土下座を強要させたり

自分をハメようとした敵を逆に金で買収したり
およそ主人公とは言えない容赦ない悪役っぷりをまざまざと見せ付けます。
かつてはこんな外道野球も存在しましたが


渡久地も主人公として「まさに外道!」と言える存在かもしれません(笑
②異質な試合
さて、主人公も異質ならば、彼が活躍する試合という場もやはりなかなか異質な内容です。
それが顕著に表れてる試合を一つ例に取り上げてみたいと思います。
首位マリナーズとの三連戦。

オーナーの命令により怒涛の三連戦三連投することになってしまった渡久地。
当然コンディションは万全とは程遠い状態です。しかもこの試合のワンナウツ契約のレートは20倍。失点即デッドラインの過酷な状況。
しかし流石の渡久地も三戦連続先発では王者マリナーズ打線を満足に抑えることはできません。
結果

打たれる

打たれる

見るも無残な炎上。三回を終えてまさかの14失点。

この時点でこの後全ての打者を抑え切ったとしてもその負債実に105億。
20倍レートということでもう負け額の桁もおかしいことなってます。
なにもない!見よこのブザマに炎上したヒーローの姿を!
だが!だからといって渡久地がこの物語のヒーローの資格を失いはしない!
なぜなら・・

渡久地は知っていた。
今日これからこの球場が大雨に見舞われることを・・!

事前に天気予報を入念にチェックしこの情報を最初から掴んでいた渡久地。見て下さいこのしてやったり顔。
ポツポツと降り始めた雨に一転慌て始めるマリナーズベンチ。
そして渡久地との年俸マネーゲームで勝利を確信していたオーナーの顔色も変わります。
なぜなら・・

そう、いくら圧倒的大差の勝ちゲームでも試合が成立する5回より早く降雨コールドが宣告されれば、この試合は試合としては不成立即ちノーゲーム扱いとなってしまうのです。そして105億という桁外れの渡久地の負債もチャラ。
つまり渡久地の14失点の炎上も全て試合時間を長引かせ、5回になる前に大雨を待つ為の策略だったのです。
大雨が近付いていることが分かったことで、ここから試合は
マリナーズ側→何とか勝ち試合として成立する為にも試合を5回まで早く終わらせる。
渡久地側→とにかく長く試合を引き伸ばす。
という様相に変わってきます。
まずはマリナーズ

バッターボックスから足をはみ出して打つ。
これは打ったとしてもアウト扱い。
これによりアウトカウントを一つ失い試合を進められた渡久地。
しかし不敵にこう言い放ちます。

「これは頭脳のバトル。より高度な反則をした者が勝ちだ。」
高度な反則が勝負を分ける。もはや野球でも何でもありません。
しかし逆にこういう反則含めたギリギリの勝負事こそかつて賭博野球で無敗を誇った渡久地の最も得意とする領域なのです。
かくして野球という世界の中で頭脳戦という名の反則合戦が幕を開けます。

わざとボーク。
↓

反対のバッターボックスに移る。※反則によりアウト。
↓

プレートを踏まずにそのまま投球。※反則投球によりボール扱い。
↓

一塁へ進塁する際に三塁に進塁。※反則によりアウト。
渡久地の反則で更に2点を追加、16-0となるも、何とか3アウトをもぎ取り4回の攻撃を無理やり終わらせたマリナーズ。
かつてこんな↓豪快な反則もありましたが・・(シツコイ

流石にここまでひどくはありませんが、渡久地とマリナーズの四回の反則攻防もまた別ベクトルでの見応えがあって面白いです。
しかし試合が成立する5回まで残すところあと1回。
これから渡久地側が時間を引き延ばしノーゲームを狙う為にはどうするか?良い案が思い浮かばず思わず渡久地の意見を聞くナイン。

ナイン「なぁ渡久地 どうすりゃいーんだ俺たち」
渡久地「ふふ・・最高の方法を教えてやるよ」
渡久地の口から放たれる曰く「最高の方法」とは・・・

渡久地「この16点をひっくり返す」
ナニーーーーーッ!?( ゚ Д゚)
僅差の点差ならまだしも16点差です。一体どのような奇策で試合をひっくり返すというのでしょうか。
みなまで言うのもアレなので、今回はここまで触れるだけで終わりにしておきますが、もしこの先が気になる方がいらっしゃればお近くの本屋さんで立ち読みでも構わないので是非一度読んでみて下さい。
アッと驚くようなラストが待ってたりもしますよ(何
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