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VANILLA SKY

当ブログのカテゴリーを眺めてみますと漫画レビューが4、音楽レビューが3。 ブログ開始から一ヶ月以上経つにも関わらずレビュー数が圧倒的に少ないのもありますが、音楽レビューが漫画レビューと比べてバランス的にも一つ少ないのもありまして、今日は久々に本腰を入れて音楽レビューをやってみたいと思います。

映画VANILLA SKY - Sound Track ★★★★★
(★は満点で5 ☆は★の1/2の評価)


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Ⅰ:バニラスカイという映画

公式HP

解説
事故に遭った男の不思議な運命を描くミステリアスなドラマ。スペイン映画「オープン・ユア・アイズ」(97年)のリメイク。監督・製作・脚本は「あの頃ペニー・レインと」のキャメロン・クロウ。製作・主演は「M:I-2」のトム・クルーズ。共演は「オープン・ユア・アイズ」にも出演した「コレリ大尉のマンドリン」のペネロペ・クルス、「チャーリーズ・エンジェル」のキャメロン・ディアス、「ソルジャー」のカート・ラッセル、「あの頃ペニー・レインと」のジェイソン・リーほか。(以上goo映画作品紹介より抜粋。)

あらすじ
エリートのデビッドは、恋人ジュリーがいながら、パーティでエキゾチックな美女ソフィアに一目惚れ。彼の心変わりに気づいたジュリーは、彼とドライブ中、車中で怒りのあまり交通事故を起こしてしまう。そしてデビッドの人生は奈落の底へ。 (以上amazonレビューより抜粋。)

映画との出会い
(以下ネタバレ含む)
それは友人と見に行ったとある映画館。

当初お恥ずかしいが私はこの映画はただの恋愛映画に過ぎないとタカを括っていた。
出演はトム・クルーズとペネロペ・クルス、更にはキャメロン・ディアス。
今を時めく人気俳優を揃え、ハリウッドお決まりのメロドラマを演出し、カップルや女性層の人気を狙った作品に過ぎないだろうと。

しかしその予想はオープニングでいきなり裏切られた。

冒頭でデヴィッド(トム・クルーズ)が見た夢━━━━

それはNYのご存知メッカのタイムズスクエアに自分以外誰もいないという夢。
その奇妙な朝を演出するBGMはRadioheadの『Everything In It's Right Place 』

私は映画館では主にアクション映画を見るようにしていた。
それは映画館で味わう大画面、大音量というシチュエーションがアクションの大迫力を家で視聴するより、より適していると考えるからだ。

しかしこのタイムズスクエアの映像と音楽の調和はアクション映画でないにも関わらず別格だった。

本来なら雑踏でごった返す筈の大通りでデビットが味わう孤独、空虚な様子を見事に現すRadioheadの気だるい旋律。

オープニングから音楽で一気に映画に引き込まれ、それ以後も随所に絶妙なタイミングで散りばめられるSigur RosやBob Dylanの名曲の数々。

特に終盤の曲の選出は見事の一言。

バニラ色の空━━━━

決断を迫られるディビット━━━━

決して明るくはない未来へ勇気を持って踏み出す一歩━━━━

そのどれもが絶妙に挟まれる音楽に彩られている。

当時この映画を見た足で私はサントラを買いに走ることになる。
それ程、文字通り音楽に酔った映画だった。

映画の内容はニューヨークの恋愛模様の側面で主人公ディビットの二転三転する人生。そして有触れたロマンス路線とは一風変わった鬱展開。

特にキャメロン・ディアスの妖艶な魅力と壊れていくヒステリーな様子が実にいい味でこの物語にアクセントを加えている。

そして誰もが羨む美男美女の恋物語を演じたトム・クルーズとペネロペ・クルスは周知の通り収録を終えた日常でも恋人として結ばれることになる。

今でもこのサントラを聞く度に、そんな映画にまつわる思い出一つ一つが思い起こされ音楽が起用されたシーンが頭をよぎる。

今回に限ったことではないが、サントラは買うことによって作品自体の思い出はより強くなると言えるだろう。


Ⅱ:アルバムレビュー

最近コレとかコレとかでレビューする度に評価満点を連発しちゃってるので今回は映画未見の方という条件付きで星を一つ減らしてみた。本当はそれでも声を大にして満点って言いたいのだけれども( ´Д`)

とくにサントラってどれだけ熱く良さを語っても実際にそのサウンドが使われてた作品を知らない人にとってはそこまで評価を得られなかったりする訳で。

ただ、言いたいのは私が色々考えた末、音楽アルバムで満点を付ける作品はFatboy Slim 『 On the Floor at the Boutique』 と今回のVANILLA SKYの二枚だけであるということ。

やっぱり胸を張って満点を押せるアルバムっていうのはそうそう出逢わない。

<曲目>
①All The Right Friends - R.E.M. ★★★
R.E.Mの爽快なナンバー。デビットの出勤の軽快な朝の雰囲気と良く合っている。

②Everything In It's Right Place - Radiohead ★★★★★★★(ry 臨界点突破
①から一転、気だるさ、孤独、鬱という名の狂気。個人的にそんな色々な暗い感情が入り混じったと感じる曲。

③Vanilla Sky - Paul McCartney★★★★
映画主題にもなったVanilla Sky。歌うのはご存知元ビートルズのPaul McCartney。アコギベースのカントリー風の曲。

④Solsbury Hill - Peter Gabriel ★★★
Peter Gabrielの大ヒット曲。引き続きのどやかで、明るい曲が続く。

⑤I Fall Apart - Julianna Gianni★★☆
Julianna (ジュリー)は何と映画内のキャメロン・ディアスの役名。歌うのも勿論キャメロン。意外に歌も上手くてしっとりとした曲が心地良い。『I Fall Apart 』というタイトルも格好良い。

⑥Porpoise Song - The Monkees ★★
ひたすら『GOOD-BY』と言い続ける寂しげさが漂う。

⑦Mondo '77 - Looper/Francis MacDonald ★★☆
クラブテイストの雰囲気がイカしてます。

⑧Have You Forgotten - Red House Painters★★★☆
落ち着いたゆっくりとした癒しの曲。疲れた朝とかにいいかも。

⑨Directions - Josh Rouse★★★★☆
ここで再びポップなアップナンバー。ドライブに合いそうな軽快な疾走感がたまらない。しかし、その中にも途切れそうなハイトーンの声に切なさを感じる。

⑩Afrika Shox - Leftfield/Afrika Bambaataa ★★★
イギリステクノ界の寵児、Leftfieldの打ち込みテクノ。盛り上げきらず、じっくりとノる感じ。

⑪Svefn-G-Englar - Sigur Ros★★★☆
ここでSigur Ros。落ち着いた曲が多いこのアルバムの中でも取り分けスロウなナンバー。甘く囁き続けるような女ボーカルの声が優しく響き続ける。

⑫Last Goodbye - Jeff Buckley★★★☆
これぞオルタナ。しかし、その中にもどこか優しい暖かさがしっかりと滲み出ている。

⑬Can We Still Be Friends - Todd Rundgren ★★☆
天国から一転顔をのぞかせ始めた真実。明るい歌声が余計にデビットの悲劇を面白おかしく演出する。

⑭Fourth Time Around - Bob Dylan ★★★★☆
Bob Dylanの秀逸なる一曲。アコギとハープの絶妙な絡み。

⑮Elevator Beat - Nancy Wilson ★★★★★
監督キャメロンクロウの夫人でもあるナンシーのインスト。デビットが最後の屋上へエレベーターで向う時に流れる。インストにも関わらず個人的にこのアルバムで一、二を争う名曲。

⑯Sweetness Follows - R.E.M.★★★☆
ラストはOPに引き続きR.E.M.。OPとは対照的な静かな曲。
ひずませたギターの音とアコギが織り成すハーモニー。

⑰Where Do I Begin - The Chemical Bros.★★★★
我がフェイバリット The Chemical Brothersから初期の名曲を。


Ⅲ:総括

映画のサントラは大抵が曲は映画に挿入された順序でただ羅列された場合が多い。

場面に分けた多種多様なジャンルの曲をそのまま放り込んでいるのだから当然良い曲はあっても、アルバムとして見ると纏まっていない時がある。

しかしこのVANNILA SKYに関しては最初から最後まで見事に音楽作品として一本の筋で繋がっている。
静かで落ち着いた曲は確かに多い。が、決してそれだけではない。アップテンポで明るい曲も勿論入っている。

しかしそれでも全体のバランスを乱す程突き抜けた曲は入っていない。

選曲としても素晴らしい。前後の曲の兼ね合いも見事である。

蒼々たるビッグアーティストが名を連ねてはいるが、サントラというよりはまるでトリビュートアルバムのようにアルバムとして一つに完成している。

何故ここまでサントラにも関わらず見事な作品に仕上がっているのか?

それは当映画監督であり、音楽ジャーナリストでもあるキャメロン・クロウの力が大きかったからであろう。

あくまで推測に過ぎないが映画での曲の起用そのものが、まるでオペラやミュージカルのように場面の流れだけはなく曲の流れさえも意識して制作した所以であると。

音楽を素材として作品に取り入れる、彼の手腕こそこの映画の魅力でありそれがこのアルバムとして実ったのである。
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